【サントリー全勝優勝】サンゴリアスの強さは高い「ラグビーナレッジ」にあり

1月14日(土)に全8試合が行われたトップリーグ最終節(第15節)。ノエビアスタジアム神戸では神戸製鋼対サントリーの一戦が行われました。首位サントリーは勝てば(2位ヤマハ発動機の勝敗にかかわらず)4年ぶりのトップリーグ制覇となる大一番。ヤマハスタジアムでのヤマハ発動機対トヨタ自動車の結果を待つことなく全勝で優勝を飾りたいサントリーの前に、日本選手権出場を逃した神戸製鋼がホームスタジアムで立ちはだかりました。

 

サントリーは前半、神戸製鋼LOアンドリース・ベッカー選手に先制トライを許し(前半9分)、直後にはPGも決められて8-0とリードされるなど、SH流大キャプテンも「受けに回ってしまった」と振り返る苦しい展開となりました。しかし前半22分、サントリーはFLツイ ヘンドリック選手が豪快な突破でトライを決め、前半終了間際にはCTBデレック・カーペンター選手のビッグゲインを起点に左大外に構えていたWTB江見翔太選手にまでパスが渡りトライ。8-14と逆転に成功します。

 

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トライを決めたWTB江見翔太選手(左)と、祝福するFB松島幸太朗選手。

 

後半もサントリーは先発復帰したFB松島幸太朗選手がトライを決めて8-21。神戸製鋼もCTB山中亮平選手のトライ&ゴールで15-21と点差を詰め、12分にはサントリーWTB江見選手がインテンショナルノックオンでシンビンとなったことで、さらに点差を縮めるのは必至と思われました。しかしサントリーは神戸製鋼の猛攻をしのぎきっただけでなく、SO小野晃征選手がPGを決めて15-24とリードを広げます。

 

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この試合のプレースキック成功率は5/6。SO小野晃征選手のキックは冴えていました。

 

そして後半38分にもPGで加点したサントリーが15-27としたところでフルタイム。サントリーが15戦全勝で4年ぶり4度目となるトップリーグ王者となりました。第1節の近鉄戦で14-13、第3節のリコー戦で23-17と序盤は苦戦することもありましたが、2位ヤマハ発動機を直接対決で突き放した第13節(41-24)を含め危なげない試合運びで、まさに完勝と言えるシーズンでした。

 

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ラグビーを愛するサントリーホールディングスの佐治信忠会長、歓喜の胴上げ。

 

サントリーの強さはどこにあったのでしょうか。沢木敬介監督は「選手全員のラグビーのナレッジ(knowledge)、理解度の向上」を挙げました。ナレッジは直訳すれば「知識」、沢木監督が言い換えたように「理解度」、時には「ラグビーインテリジェンス」という表現も使われます。ラグビーをいかに知り、理解し、それを勝つために遂行できるか。今季のサントリーはそれを突き詰めてきたわけです。サントリーと日本代表でエディー・ジョーンズ氏の下で長年コーチを務め、U20日本代表監督としてもJWC(ジュニア・ワールド・チャンピオンシップ)昇格へと導いた沢木監督、やはり高い「ナレッジ」がその実績を築いてきたのでしょう。

 

「うちが目指しているラグビーをやるには、ナレッジの部分が大事になってくる。(小野)晃征はもちろん、(トライ王の)中靏(隆彰)がなんであんなにトライを取れたかというと、やはりナレッジが大きい。キャプテンの流(大)にしてもスペースを見極めて、毎回毎回デシジョンメイキングできるようなラグビーができています」(沢木監督)

 

SH流大キャプテンも「ナレッジ」について、またそれを共に司ってきたSO小野選手についてこう続けました。

 

「(小野)晃征さんとはポジション柄一番よくしゃべるのですが、9番・10番というチームをコントロールしなければならない立場なので、話すことは多いです。今(沢木監督が)言われたナレッジのところ、チームが勝つために必要なことを一番厳しく遂行している選手で、スタンダードが変わらない。チームのスタンダードが低いときは厳しく言ってくれますし、そういう面で僕も学ぶべき面が多かったです」

 

徹底的にマークされながらも、的確なプレーでチームを牽引したSO小野晃征選手。

徹底的にマークされながらも、的確なプレーでチームを牽引したSO小野晃征選手。

 

その小野選手がマン・オブ・ザ・マッチとなって勝利し、優勝。今季の快進撃を象徴する試合だったと言ってよいでしょう。日本選手権で2冠目を狙うサントリーサンゴリアスは、準決勝で流選手の母校である帝京大学と対戦します。

 

■サントリー記者会見

 

沢木敬介監督「今日は神戸(製鋼)さんのプレッシャーに対して少し苦労して試合の内容的には良くない展開だったのですが、今シーズン1試合1試合大事に戦いながら最終的にトップリーグのチャンピオンになれたことはチームとしての成長だと思います。ただ、自分たちはもう日本選手権に向いていますので、しっかり準備したいと思います」

 

SH流大キャプテン「今日のサントリーのテーマは『ハングリーであり続ける』ということで(試合に)臨みました。ただ、前半は神戸(製鋼)さんの方が明らかにハングリーなプレーをしてきました。そこでサントリーは受けに回ってしまって、監督も言うように内容としては自分たちの目指すべきものではありませんでした。ただ、15戦苦しみながらも勝ちを重ねて、1試合1試合成長しながら(全勝)優勝できたことは喜びが大きく、本当の喜びをつかむためにも日本選手権にいい準備をして臨みたいと思います」

 

──前半受けに回りましたが、ハーフタイムの指示は?

沢木「若い選手も多くなってきたので、こういうファイナルの(決勝に相当するような負けられない)ゲームということで緊張が見られました。明らかにウォーミングアップからみんな緊張していて、コミュニケーションもとれずパフォーマンスにも緊張が表れていました。ただ、こういうゲームを経験することで選手として成長できると思うので、今日はいい経験になったと思います。ハーフタイムは『自分たちが何をしなければいけないか』ということをただシンプルに伝えただけです」

「ラグビーに関してはリアクションのところを早くすることを言って、あとはメンタル面でもう一度ハングリーにしっかりチャレンジすること、神戸製鋼をしっかりリスペクトして自分たちが何をしなければいけないかということを確認しただけです」

 

──シンビンで14人になったものの無失点で切り抜けた時間帯、気をつけたことは。

「しっかり我慢強くやることが大事でした。セットプレーを増やしながら時間を使うことも考えました。その結果、ディフェンスでは上手くしのげましたし、いい時間の使い方ができたかなと。ただシンビンに至るまでのところで、もっと相手に付け入る隙を与えずに僕らがコントロールできた部分もあったので、そこでシンビンになってしまったのはチームとしての未熟さが出たのかなと思います」

 

──ショットを狙えた場面で狙わなかったケースもありましたが、意図は。

「ラインブレイクしたりアタックを継続することがなかなか難しくなってきていたので、しっかり得点を重ねることを優先して、そのような判断をしました」

 

「神戸(製鋼)さんは体が大きいメンバーが揃っているので、ボールを動かしていくということで、ゲームプランとして前半からしっかりボールを動かすという方針でした。できてはいたんですけど、リアクションがすごく遅くて、2人目のよりが遅くてノットリリースザボールを取られたりしていましたので、もっとみんなのリアクションを早くして、自分たちがやるべきことをもっと理解しなければいけないなと思いました」

 

──入りの悪さの原因は。

「コンタクトスピードが神戸の方が明らかに良かったのが前半最初の10分でした。そこから下げられて、下げられて、後で聞いたらFWも前半の方が疲れていたということです。もっと自分たちから仕掛けて、動いて、神戸にもっとダメージを与える前半にしなければならなかったのですが、神戸の方が意図的に動いて、ブレイクダウンも制圧して、コンタクトスピードも上げていました。僕らがやらなければならないスタートを逆にやられてしまったと思います」

 

──HCでの優勝と監督での優勝の違いは。

沢木「優勝した時に違うというよりは、同じことが多くて。チャンピオンになる時はチーム全員がしっかり同じベクトルを向いています。違うこととしては前のラグビーから進化しているということですね。自分たちのラグビースタイルはアグレッシブ・アタッキング・ラグビーなのですが、前回優勝したときよりもボールキープ、ただどんどんラグビーが進化している中でどうやってスペースを作って、どうやってそこを攻めるかというアグレッシブ・アタッキング・ラグビー(をするため)の進化が進みました」

 

──そのうえで小野選手の活躍は。

沢木「(小野)晃征もそうですけど、選手全員のラグビーのナレッジ、理解度が上がっています。うちが目指しているラグビーをやるには、ナレッジの部分が大事になってくる。晃征に限らず中靏がなんであんなにトライを取れたかというと、やはりナレッジが大きい。流にしてもスペースを見極めて毎回毎回デシジョンメイキングできるようなラグビーができています」

「(小野)晃征さんとはポジション柄一番よくしゃべるのですが、9番・10番というチームをコントロールしなければならない立場なので、話すことは多いです。今(沢木監督が)言われたナレッジのところ、チームが勝つために必要なことを一番厳しく遂行している選手で、スタンダードが変わらない。チームのスタンダードが低いときは厳しく言ってくれますし、そういう面で僕も学ぶべき面が多かったです」

 

──2年目の流選手のキャプテンとしての評価は。

沢木「流をキャプテンにしたのは僕の基準での勝手な判断なのですが、こう見えてけっこう図々しくて、ぶれずにタフなチョイスができる選手です。パフォーマンスはみなさんから見ての通りです。うちにも日和佐(篤)もいます。それぞれ(違う)持ち味がありますので、2人がいないとうちのラグビーはできないので、それぞれが持ち味を発揮できる戦術になっています」

 

<取材・文・撮影/齋藤龍太郎(楕円銀河)>

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