【日本選手権決勝 直前取材】両チームのディフェンス練習に漂う「名勝負の予感」

日本選手権決勝2日前の1月27日(金)、激突するサントリーとパナソニックの練習をそれぞれ取材してきました。サントリーが午前中、パナソニックが15時ごろからの練習だったこともあり、東京都府中市(サントリー)から群馬県太田市(パナソニック)まで車で移動して両チームを取材。できれば別々の日ではなく同日に取材して、その日のそれぞれの雰囲気、温度を感じたかったのです。

 

双方とも熱のこもった練習でした。サントリーは張りつめた緊張感の中で全員が真剣な表情で取り組んでいたのに対し、パナソニックは実戦に近い強度のぶつかり合いをするシリアスさのなかにどこか(いい意味での)リラックス感が漂っている印象がありましたが、これはチームカラーの違いでしょう。両チームの「らしさ」が出ていた練習だったと言えます。

 

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サントリーの練習。あらかじめディフェンス中心と決められていたようです。

 

練習内容については、いずれもアタックの確認はもちろんのこと、ディフェンスの方に力点を置いていたのが印象的でした。それについて、まずサントリーのWTB中靏(なかづる)隆彰選手に質問。トップリーグ2016-2017の最多トライゲッター(17トライ)にしてベストフィフティーン、そしてMVPです。入念にディフェンス練習していた意図とは。

 

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サントリーWTB中靏隆彰選手。やはりトライへの期待がかかります。

 

「パナソニックさんは組織でしっかりディフェンスをして、そこからターンオーバーを狙ってアタックという戦い方をしてくると思うので、僕らはそのディフェンスに負けない、今季1年やってきたアタックをしっかりやりたいですね」

 

練習でディフェンスに時間を割いていたことについては、こう答えてくれました。

 

「今日がディフェンス(練習)の日だったこともあるのですが、相手(パナソニック)がターンオーバーを狙ってくるチームなので、ターンオーバーされた後にディフェンスするということも重要になってきます。そこの確認をしました」

 

アグレッシブ・アタッキング・ラグビーを標榜するサントリーも、パナソニックのターンオーバーから一気呵成に畳み掛けるアタックへの対策が第一、ということでしょう。一方、サントリー沢木敬介監督はディフェンス中心の練習メニューであったことは認めつつ、その真意をもう少し踏み込んで説明してくれました。

 

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就任1年目でトップリーグ制覇。2冠を目指すサントリー沢木敬介監督。

 

「僕らサントリーは、ディフェンスはディフェンス、アタックはアタックという(別物扱いする)考えではないんです。うちではディフェンスサイクルとかアタックサイクルと呼んでいるのですが、ディフェンスの目的はボールを奪い返すことです。守って自分たちにボールが来たときのアタックまでが一連のサイクル、という考えで1年間ずっとトレーニングしてきました」

 

ディフェンスはアタックと一連のもので、ディフェンスからアタックが始まり、それを1年間鍛錬してきたところに今季のサントリーの強みと自信がある。そう語ってくれました。

 

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サントリーでの取材を終えた後、中央道、圏央道、東北道と移動し、15時前にパナソニックのグラウンドに到着しました。そのときはすでにメンバーが発表されていましたが、グラウンドには先発HOのキャプテン堀江翔太選手の姿だけありませんでした。実はこの日、報道でもあったように第2子が誕生したということで練習をお休みしていたのです。

 

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パナソニックはアタックも織り交ぜつつ、ディフェンスも入念にチェック。

 

パナソニックの練習も、メンバー外の選手たちがアタック役でメンバーがそれを止めにかかるという形のディフェンス練習に比較的時間が割かれていました。アタック練習も絡めての全体練習は1時間半ほど。終了後、堀江選手に代わりゲームキャプテンを務めるFL布巻峻介選手は、ディフェンス練習についてこうコメントしてくれました。

 

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パナソニックFL布巻峻介選手。大事な決勝でゲームキャプテンを拝命しました。

 

「(サントリーの)アタックを意識しているのもそうですし、僕たちがディフェンスのチームであるというプライド、強みを持っているので、そこを確認することが(今日の練習の)目的でしたね」

 

たまたまではありますが、試合前々日に両チームがディフェンスに重きを置いていたことになります。サントリーは自慢のアタックをディフェンスからのサイクルを起点とすること、パナソニックはディフェンスのチームであることのプライドを再確認すること、そして中靏選手が指摘したようにターンオーバーからのアタックへの想定も含まれているはずです。

 

堅守があってこそハイレベルなラグビーが成り立ち、それが我々を魅了してくれるのでしょう。両チームのグラウンドで強くそう感じました。

 

最後に、パナソニックのロビー・ディーンズ監督のコメントです。オーストラリア代表HC時代に指導したFLデービッド・ポーコック選手(パナソニック)とFLジョージ・スミス選手(サントリー)のマッチアップにも言及しています。

 

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パナソニックのロビー・ディーンズ監督。「素晴らしい試合になる」と明言しました。

 

「グラウンドに来る、あるいはテレビで観戦するラグビーファンの方々は、ものすごく素晴らしい試合を目撃することになるでしょう。(特に)彼ら(FLデービッド・ポーコック選手とFLジョージ・スミス選手)がプレーするということで、ファンの皆さんにとってもこんなに素晴らしい機会はないと思います」

 

名勝負になることが半ば予告された、見どころだらけの日本選手権決勝。まさに日本ラグビー界の頂上決戦であり、ハイレベルな戦いになりそうです。勝ち負け以上に来シーズン以降へのますますの期待感を抱かせてような、ハイレベルな試合になることを期待しています。

 

国内シーズンの掉尾を飾る日本選手権決勝、サントリーサンゴリアス対パナソニック ワイルドナイツの一戦は、1月29日(日)14時、秩父宮ラグビー場でキックオフです。

 

<取材・文・撮影/齋藤龍太郎(楕円銀河)>

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