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【コーチが語る】サンウルブズの若手を田中&堀江レベルまで引き上げたい

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少し遡りますが、4月10日(月)午前の練習を終えたサンウルブズの、フィロ・ティアティアHC、田邉淳アシスタントコーチ(アタックコーチ)が取材に応じました。第2節から第5節までの遠征について振り返りつつ、8日のブルズ戦や今後のことについても言及しています。

 

■フィロ・ティアティアHC遠征レビュー

 

「ようこそ。来ていただきありがとうございます。今シーズンこれまでの過程ですが、世界で最も厳しいコンペティションであるスーパーラグビーに今年デビューした選手たちが23名います。これだけハードな大会にもかかわらずどれだけ競争できるか、というところが一番のターゲットです。サンウルブズのジャージーを着てプライドを持って戦っているので、毎週毎週よくなってきています。トライも効率よく取ることができ、アタックは非常に上手くいっています。改善しなければならないのはディフェンスですが、そこは毎週毎週課題として日々練習しています。南アフリカ、シンガポールから帰ってこられてうれしく思いますが、非常に厳しい遠征でした。ただ、いい経験を積むことができましたし、選手のことを知ることもできました。時間が経てば経つほど団結力が生まれてきていると実感しています。選手だけでなくマネジメントサイドも結束力が生まれています。最初に掲げた『RISE AS ONE』というフレーズのもと、選手もマネジメントサイドも一緒になって上がっていっているのではないかと思います。今週はブルズ戦ですが、今週は全員(そろって)います。試合に出る選手、ニュージーランドへの遠征スコッドの発表も今週発表させていただきます」

 

 

■質疑応答

 

──チームを評価しているポイントは?

 

ティアティアHC「敵に対してプレッシャーを与えていくことを毎週毎週少しずつ変更してアタックしている点はうれしく思っています。プレシーズンの2週間半ですべてをカバーしようとしたのは非常に難しいことだったのですが、毎週よくなるために毎週完璧にカバーしていかなければならないのがサンウルブズの課題だと考えています。チームとして毎週レビューして改善していく方法しか、今はないと思っています」

 

──シニアクラスのメンバーも戻ってきますが、期待は。

 

ティアティアHC「若い選手はコーチが期待している以上にパフォーマンスを発揮してくれたと思っています。選手たちは十分理解していると思いますが、我々は一番速いチームでもないし、フィジカルなチームでもないし、大きいチームでもない。にもかかわらず、このチームを強くしたいという気持ちが各選手に生まれてきていて、それを選手一人一人がどのようにやっていくかを理解して取り組んでくれているというのが現時点の成功かと思います。ジャパンに入っている選手、そうでない選手もいますが、そんなチーム内で理想的な競争ができていると思います」

 

──結果を出せなかったことについて、悔やまれる点は。

 

ティアティアHC「常に振り返っている部分、反省している部分はあります。しかし我々がやってきていることに対してはとても自信を持っています。コーチがやっていることについても自信を持っている状態です。まず田邉が素晴らしいアタックプランを立ててくれています。カウンターアタックもいい。またベン・へリング(ディフェンスコーチ)はいいディフェンスプランを持っています。長谷川慎(スクラムコーチ)は素晴らしいスクラムの指導をしてくれています。コーチングチームとしてはまだまだ若いですが、今後もどんどん向上できることにエキサイトしています」

 

──スーパーラグビーの中でも上位のスタッツが多いことについて、特に満足している項目があれば教えてください。

 

ティアティアHC「スタッツはとても重要で役に立つツールだと思います。いい意味で他のチームと比べる物差しになります。たとえばハリケーンズは22年間の歴史があるチームですが、彼らのトライにまつわるラインブレイクのメーターなどのスタッツにいかに近づくか、そういう目安になるものです。相手にプレッシャーをかけるということは徹底してやっているつもりです。第一に目指すべきは勝つということ。しかし第二に、それよりも大事になってくるのは選手がそれぞれのプレーのプランを遂行することです。アタックプラン、ディフェンスプラン、セットピースのプランを遂行することが重要です。そうすることで相手にプレッシャーをかけることができると考えます」

 

田邉コーチ「オフロード(パス)は特に去年と比べると高い数字が出ていて、そういうところを見ると日本代表とコラボできているな、とうれしく思っています。また、バックスリーがトライを獲っていることもチームとして(誇らしいですし)、また他のチームから見ても脅威になるようなバックスリーになっていると思っています」

 

──アタックの方向性を変えているように見えますが、プランをどのように変えて落とし込んでいるのでしょうか。

 

田邉コーチ「非常に大事なのは週の初めです。今日と明日の48時間が学ぶ時間であり、今日の朝、今日の午後、明日の朝、明日の午後というのが選手にとっては学ぶ時間となります。すべてビデオを撮ってそれを(使って)選手が部屋で勉強するよう時間を充ててもらっています。一番大事なのは土曜にパフォーマンスをピークに持っていくことです。そういう意味で選手がいつ誰とどのように(過ご)していくかというプランも個人個人で立てて、それをコーチが理解しているということが一つのプロセスかと思います」

 

──ポゼッションが多くなっていますが。

 

田邉コーチ「そうですね。そこがアタックとディフェンスをもう少しコラボさせていかないといけないところかなと思います。ボールのポゼッションが少なくてトライできるのが一番理想ですが、今のサンウルブズでどれだけボールを離して、そこからトライできるのか、というところがシーズンを通して課題になっていくのかなと思います。そのあたりも日本代表とディフェンスコーチのベンと話し合いながら、何がベストなのかを作っていけたらいいと思っています」

 

──若手の起用については日本代表ジェイミー・ジョセフHCからのリクエストでもあるのでしょうか。

 

ティアティアHC「ジョセフHCサイドとは常に密に連携を取りながらコーチングしています。選手プランも一緒に立てているつもりです。サンウルブズのスコッドの中から1人でも多くの選手に学ばせて、強度の高い試合に出場させるということをいつも考えてやっています。SH田中史朗やHO堀江翔太はジャパンのとても有名な選手になっていますが、彼らのレベルまで若い選手を引き上げていきたいと思っています。インターナショナルのスタンダードに値するような選手をサンウルブズを通して育てていくことが目的です。また、すべてのラグビー選手にとってジャパンのラグビー、ジャパンのジャージーを身にまとってプレーすることが目標となってくるでしょう。コーチは一人でも多くの選手がジャパンのジャージーを身にまとえるように育てることが責任になってくると思います。また、ジョセフHCはどのような選手がプライドを持ってジャパンのジャージーを身にまとってくれるのかを見ながら常に選手を選考しています。(そうしたことを)コミュニケーションを取りながらやっています」

 

──予想を超える活躍をした選手、特にインパクトを与えてくれた選手を教えてください。

 

ティアティアHC「一人の選手の名前を挙げるのはアンフェアなので避けたいのですが、個々に対してはレビューを通しながらどのようなインパクトを与えたかを話しているつもりです。全体のグループとしての成長についてはうれしく思っています」

 

──セットピースの安定、成功率の向上についてはどう感じていますか。

 

ティアティアHC「先ほど田邉が言ったように、週の初めの48時間が勝負になってくると考えています。それぞれの役割をしっかり落とし込み、理解を深めていく。どうボールを獲得するのか、そのため最初の準備が重要です。セットピースを通しての成長についてはとてもハッピーです。ただ、48時間における他の準備とは変わりません。選手もコーチもいい仕事をしてくれていますし、長谷川慎コーチも大きな相手に対してのスクラムの組み方を徹底していると感じています。また、私もラインアウトに関してはラインアウトリーダーとともに『どう相手のボールをスティールするのか』を徹底的に話し合って、全員で作り上げている段階です。でもまだまだ成長の余地はあると思いますので、今後の成長も楽しみにしています」

 

──2年目のサンウルブズのパフォーマンスについて、他のチームの知り合いは何か話していましたか?

 

ティアティアHC「他のチーム、特にチーターズは我々のプレーを褒めてくれました。ブルズもストーマーズも同じです。田邉のアタックプラン、プレッシャープラン、ベン・へリングのディフェンスプランは各HCから賞賛されました。そのように我々の成長に気づいてくれているコーチがいるのはうれしいことだと思います」

 

──自陣22メートルに入られると苦しい展開になることが多いようですが。

 

田邉「ブルズはセットピースが強いですし、ラインアウトモールも前回対戦では8回のうち7回モールを組まれたので、それをどうやって減らしていくか、またキックの種類も重要になってきます。それが今週の一つのフォーカスポイントです」

 

ティアティアHC「補足させていただくと、南アフリカのチームは(どのチームも)同じようなDNAを備えているような気がします。大きくて強くて、我々がペナルティーを犯したときにはラインアウトやピックアンドゴー、スクラムでプレッシャーをかけて活かしていくようなチームです。大きいチーム対小さいチームは大きいチームの方が勝つケースが多いですが、毎回そうだとは限りません。そのために我々はいいプランを今週末に向けて立てているつもりです。このプランを遂行できる今週末を楽しみにしています。そのためにも向上していかなければなりません」

 

結果が出ない中でも勝利を目指すサンウルブズ。そして勝ちに行きながら、まだ経験の浅い若い選手も育てていく。この両輪を同時に動かすのはかなり難しい仕事でしょう。しかし「若手を田中&堀江レベルまで引き上げる」ことに成功すれば、2019年のラグビーワールドカップはより期待できる大会になるのではないでしょうか。

 

<取材・撮影・文/齋藤龍太郎(楕円銀河)>