RWC2019の対戦相手に完敗…日本代表22-50アイルランド代表

ルーマニア代表戦勝利から1週間。6月17日(土)、ラグビー日本代表は世界ランキング4位のアイルランド代表を静岡・エコパスタジアムに迎えて対戦しました。日本代表はアイルランドとワールドカップでの2度の対戦も含め過去7試合を行っていますが、1985年の初対決以来、1度も勝てていません。歴史的初勝利を目指す一戦となりました。

 

昨年はニュージーランド代表の、そして今年はイングランド代表の、ともにテストマッチ最長連勝記録を18でストップさせた強豪アイルランド。2019年のラグビーワールドカップ日本大会で日本代表と同じプールAに入りました。つまりは真の“前哨戦”となったわけです。会場は同大会での使用が決まっているエコパスタジアムで、27381人ものファンが詰めかけました。

 

日本代表は、先週のルーマニア戦からキャプテン・HO堀江翔太選手、FLリーチ マイケル選手、SH田中史朗選手、WTB福岡堅樹選手といった主力、そしてチーム最年少の東海大4年野口竜司選手を先発に据え置いた一方、先発PRにはルーマニア戦でリザーブだった稲垣啓太選手、伊藤平一郎選手が入りました。SOはルーマニア戦で大活躍した小倉順平選手に代わり田村優選手に。FBが本職の松島幸太朗選手は2015年のワールドカップ以来となるWTBに入り、出場予定だったCTBティモシー・ラファエレ選手は負傷のため急遽デレック・カーペンター選手にチェンジ、この試合が日本代表初キャップとなったCTBウィリアム・トゥポウ選手とコンビを組みました。

 

アイルランド代表は現在ニュージーランドに遠征中のブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズに主力を11選手輩出しながら、6月10日のアメリカ戦で55−19と大勝し来日。この日本代表戦には今ツアーのキャプテンであるFLリース・ラドック選手ほか、WTBキース・アールズ選手、FBシモン・ジボ選手といった前回ワールドカップ出場メンバー6人が先発するなど万全の布陣で臨みました。

 

先制したのはアイルランド代表でした。前半6分にSOパディー・ジャクソン選手がPGを決めると、11分には経験豊富なWTBアールズ選手がトライ。0−10とリードします。対する日本代表も14分、SO田村選手がPGを決めて3−10としますが、PR伊藤選手が前半24分、不当なプレーによるシンビンで10分間の退出(2試合連続のイエローカード)。数的不利になった日本代表は、アイルランドFLダン・リーヴィー選手に24分、28分と連続トライを許し、31分NO8ジャック・コナン選手にもトライを追加され3−31。このスコアで試合を折り返しました。

 

後半、先制したのはまたもアイルランド代表でした。5分、NO8コナン選手が再びトライし3−38とさらにリードを広げます。ここから巻き返したい日本代表は19分、マイボールスクラムを起点に、SH田中選手から交代していた流大選手が球をさばき、ラックからの流選手のパスを受けて走り込んだFB野口選手が相手ディフェンスを突破しチーム初トライ。SO田村選手に代わり入っていた松田力也選手がゴールを決めて10−38としました。

 

2試合連続で先発した日本代表FB野口竜司選手。チーム初のトライを奪う直前のラン。

2試合連続で先発した日本代表FB野口竜司選手。チーム初のトライを奪う直前のラン。

 

後半19分、FB野口竜司選手のトライを祝福する日本代表フィフティーン。右後方で手を叩くSH流大選手のテンポアップも功を奏しました。

後半19分、FB野口竜司選手のトライを祝福する日本代表フィフティーン。右後方で手を叩くSH流大選手のテンポアップも功を奏しました。

 

後半25分と32分、再びアイルランドが連続トライで10−50と再び点差が広がったものの、日本代表は試合終盤、再び反撃します。36分、SH流選手のクイックタップを起点にWTB福岡選手がタッチライン際を駆け抜けトライ。15−50とし、直後の38分にもWTB福岡選手が大きくゲイン。追走していたSH流選手にパスが渡り、そのまま独走トライを決めて22−50。このスコアのまま試合終了となりました。

 

後半36分、日本代表WTB福岡堅樹選手はスピードを活かした「らしい」ランニングでトライをもぎ取りました。

後半36分、日本代表WTB福岡堅樹選手はスピードを活かした「らしい」ランニングでトライをもぎ取りました。

 

後半38分、日本代表SH流大選手はトライを決めた後、喜ぶ間もなく自陣へ。「時間がなかった」と次のトライを目指す心境だったことを試合後に明かしました。

後半38分、日本代表SH流大選手はトライを決めた後、喜ぶ間もなく自陣へ。「時間がなかった」と次のトライを目指す心境だったことを試合後に明かしました。

 

日本代表のジェイミー・ジョセフHC(ヘッドコーチ)は落胆を隠しませんでした。

「最高の準備ができ、リーダーもしっかりチームを牽引して役割を明確にできた1週間でしたが、非常に残念な結果になりました。世界4位のチームに対しては自分たちのプランを遂行し、死に物狂いで戦わなければなりませんが、貪欲な姿勢が足りなかった。選手たちに貪欲さがなければ一大事。ゲームプランを変えるか、選手を変えるか。どちらかです」

今後の方針転換まで示唆しましたが、後半から出場し、チームに勢いを与えてトライを挙げた選手たちについては、

「ハングリー精神、貪欲なプレーはよかったと思います」

と活躍を讃えました。

 

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キャプテンのHO堀江選手も悔しそうに試合を振り返りましたが、

「残念な結果です。自分たちのミスからやられてしまいました。あと1回試合ができるので、この1週間で修正していきたいです」

と視線を早くも次戦に向けていました。

 

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アイルランド代表の名将ジョー・シュミットHCは、

「コーチングスタッフはたくさんの時間を費やして日本の試合、(かつてジョセフHCが指揮し、現在はトニー・ブラウンコーチが指導する)ハイランダーズ、そしてサンウルブズの試合もたくさん見ました。それでもトライを取られたので、完璧な分析は難しいですね」

と、今回の快勝は日本のラグビーを徹底的に分析した結果であることを明かしました。日本代表の選手名がすらすら出てくるところにも、それが表れていました。

 

完敗に終わった日本代表は24日(土)、東京・味の素スタジアムでの2戦目に向けてどこまで修正できるでしょうか。期待を込めて見守りたいと思います。

 

<取材・文・撮影/齋藤龍太郎(楕円銀河)>

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