アイルランドに奮闘も連敗…しかし今後の成長に期待

マストウィンの再戦でした。

 

ラグビーワールドカップ2019日本大会で日本代表と同じプールAに入った、世界ランキング3位(前週4位から昇格)の強豪アイルランド代表との2戦目です。17日には7トライを許し22−50、日本代表の完敗に終わりましたが、日本代表もラスト20分で3トライと断片的に“らしさ”を見せることができました。

 

24日(土)の再戦の舞台は、2019年のラグビーワールドカップ日本大会の開幕戦が行われることが決まっている味の素スタジアム(東京スタジアム)。文字通りの大会前哨戦の結末を、国内の日本代表戦史上2番目に多い29534人のファンが見守りました。

 

日本代表のゲームキャプテンは、ルーマニア戦とアイルランド戦第1戦目で主将を務めたHO堀江翔太共同キャプテンがリザーブに入ったこともあり、この試合が節目の50キャップ目となったFLリーチ マイケル選手が務めました。

 

頼れるスキッパー、再び。LOトンプソン選手からゲームキャプテンFLリーチ選手へのパス。

頼れるスキッパー、再び。LOトンプソン選手からFLリーチ ゲームキャプテンへのパス。

 

そして! 2015年のラグビーワールドカップを最後に代表を退いていたLOトンプソン ルーク選手も先発復帰! 体を張ることを信条とし、同大会で大きく貢献した彼らの“現場復帰”は、試合前から頼もしく感じられるものでした。

 

80分間、攻守に体を張ったLOトンプソン選手。代表復帰戦とは思えないパフォーマンスでした。

80分間、攻守に体を張ったLOトンプソン選手。代表復帰戦とは思えない素晴らしいパフォーマンスでした。

 

前半3分、そのLOトンプソン選手が強烈なタックルを見まい、日本代表はターンオーバーに成功します。しかしNO8アマナキ・レレイ・マフィ選手のパスが乱れ、こぼれたボールをアイルランドCTBギャリー・リングローズ選手が拾い上げて、独走トライ。0-7とアイルランドが先制します。

 

試合開始早々、アイルランドに激しいタックルを見舞うLOトンプソン選手。

試合開始早々、アイルランドに激しいタックルを見舞うLOトンプソン選手。

 

11分にもアイルランドFLジョシュ・ファンデルフリーアー選手がトライし0−14。日本代表は15分、SO小倉順平選手がPGを決めて3−14としますが、17分にはアイルランドSHキーラン・マーミオン選手にトライされ3−21。点差はさらに広がりました。

 

何とかアイルランドに食らいつきたい日本代表は24分、敵陣でチャンスを作り、SO小倉選手が右後方に構えていた桐蔭学園高時代の同級生CTB松島幸太朗選手へ阿吽の呼吸でパス。見事にパスが通り、松島選手が相手のタックルをかわしてチーム初トライを決めました。スコアは8−21となります。

 

CTBに入った松島幸太朗選手のチーム初トライ。

この試合、アウトサイドCTBに入った松島幸太朗選手のチーム初トライ。

 

反撃ムードが高まりましたが、後半31分のアイルランドFLリース・ラドック キャプテンのトライで8−28となり、勢いを消されたところで前半終了となりました。

 

巻き返したい日本代表は後半開始早々からビッグチャンスを作ります。後半3分、敵陣ゴール前でアタックを仕掛けた日本代表は、ラックからのパスを受けたFL松橋周平選手がトライ…したかに見えました。しかしTMOの結果、そのラックからパスを出していたSH流大選手がノックオンしていたことが判明しトライならず。試合後、流選手は「ボールが手につきませんでした。僕のミスです」と振り返りました。

 

ここではチャンスを逸しましたが、後半22分にアイルランドのインテンショナルノックオンがあり、そこから攻めた日本代表は後半から出場していたSO松田力也選手が前方へグラバーキックを転がします。アイルランドの選手に当たったボールはWTB山田章仁選手のもとへ。そのままインゴールへ飛び込み、日本代表2つ目のトライが生まれました。13−28。ビハインドは15点に縮まりました。

 

WTB山田選手のトライ。やや偶発的な球の動きにも見事に対応しました。

WTB山田選手のトライ。やや偶発的な球の動きにも見事に対応しました。

 

しかし38分、アイルランドのFLショーン・ライデー選手のトライで13−35。フルタイムとなり、日本代表はアイルランドに2連敗という結果に終わりました。

 

試合後、日本代表ジェイミー・ジョセフHCは落胆しつつも、先週の敗戦から打って変わって選手を讃えました。特にLOトンプソン選手のパフォーマンスには最上級の賛辞を送りました。

 

「勝てず残念でしたが、全員が役割を遂行し、いい場面も作れました。リーチをはじめ、誇れるパフォーマンスを見せてくれました。最後まであきらめずに戦えたのは誇れること。この6月は若手がステップアップし、ポテンシャルを見せてくれました。FB野口(竜司)も、(途中出場の)PR渡邉(隆之)も。LOトンプソンについては(ベテランであることから周囲からは)前向きでない反応もありましたが、今日のパフォーマンスで世界レベルのLOであることを見せてくれました」

 

そしてゲームキャプテンのFLリーチ選手は、メンタル面での成長、課題や学んだことについてコメントしました。

 

「この3試合、修正しながら自分たちのプランをやり切ってきたつもりですが、(先週は)メンタルが足りませんでした。ただ、今日はスタートから最後までよく戦った。ラグビーの原点は戦うことが一番で、フィジカリティー、ブレイクダウンの部分で日本はよくできました。トップ3(世界ランキング3位のアイルランド)を相手にしっかり学ぶことができました。一番感じたのはトップ3のメンタルのタフさ。アイルランドは最後の最後まで耐えました。日本代表も戦う気持ちはよくなってきたので、あとは戦術を少し磨けばもっと良くなるでしょう。2019年に向けて課題を少しずつ直していきたいと思います。今日は若い選手、特にSO順平(小倉)、SH流、HO庭井(祐輔)がリーダーシップを発揮していました。そしてLOルーク(トンプソン)は全てを出し切ってプレーしてくれる選手で、日本のジャージーに全て注ぐという文化を作ってくれた一人です。代表復帰は素晴らしい。ジェイミーも選出する仕事が難しくなるでしょう」

 

HC、ゲームキャプテンから極めて高く評価された36歳のベテランLOトンプソン選手は、両チームトップのタックル数27回(失敗はわずかに1)という圧巻のパフォーマンス。今後も代表に必要な存在ですが、試合後それについて問われると、

 

「自分の仕事はできたと思うし、楽しかったです。でも僕はおじいちゃんなので(笑)代表は今日で最後。日本のファンは(自分を歓迎してくれて)優しい。若い選手にもタレントはいっぱいいるし、(アイルランドには敗れたものの)ワールドカップまではあと2年あるから大丈夫」

 

と、あらためて代表引退を表明し、今後の日本代表に期待を寄せました。

 

 

春の日本代表の活動はこれで終了。7月はスーパーラグビーが再開し、サンウルブズはラスト3試合を戦った後、選手たちは各所属チームに戻り8月からのトップリーグ開幕に備えます。約2か月のリーグ戦を経て、10月末から11月にかけての約1か月間、再び日本代表は世界選抜、オーストラリア代表、フランス代表という列強と激闘を繰り広げます。

 

それまでのプロセスとなるスーパーラグビー、トップリーグを経て、代表級の選手がさらに頼もしい存在になってくれることを期待してやみません。

 

<取材・文・撮影/齋藤龍太郎(楕円銀河)>

 

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