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【フィジー戦 現地報告】ジョセフHCが挙げた敗因と課題、そして光明

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「非常にいいレッスンを受けた」

 

ジェイミー・ジョセフHCのその言葉に集約されているとおり、厳しい試合内容ではあったものの学ぶことが多く、まだこれから立て直せるという意味ではこれ以上ないレッスンでした。

 

11月26日(土)フランス・ヴァンヌで行われたフィジー戦は今秋の欧州遠征の最終戦でした。前日までの取材で日本代表の各選手が口を揃えていたのが「勝って終わりたい」ということ。当然かもしれませんが、フィジーに勝つことの難しさを知った上で選手たちは合言葉のように「勝つ」と繰り返していました。

 

しかし結果はフィジー38−25日本。一時は10点差に迫ったものの、完敗でした。前半32分にフィジーFLペゼリ・ヤトが2枚目のイエローカードで退場となり、約50分間14人で戦うことになったフィジーに力負けした格好です。日本にとってはこれ以上ないシチュエーションをだったにもかかわらず、それを生かすことができませんでした。

 

個として劣る部分をチーム、組織で対抗して止める──それが日本代表のコンセンサス(と前日までの取材で解釈していました)でしたが、最終的には個の力の差が相手のゲインやトライにつながった場面が多く見受けられました。数的優位にあったはずの50分間、それもその序盤16分間で3トライを許しては、その中で勝機を見出すことは極めて難しい。このうち1本でも止めることができていれば勝負はわかりませんでしたが、14人のフィジーに15人の日本代表は仕事量、運動量で勝つことができませんでした。

 

収穫はアタック。ゲームキャプテンを務めたHO堀江翔太共同キャプテンは試合後、どのトライも「すべてチームで(意図して)取れたトライ」と振り返りました。

 

日本代表の反撃は、35−6と大きくリードされた後半の後半から始まります。まず後半18分、フィジー陣ゴール前のラックからSH田中史朗選手が右後方のSO田村優選手にパス。田村選手はそのまま右方向ではなく左前方に走り込むと、その左後方からトップスピードでフォローしてきたFB松島幸太朗選手にラストパスを送り、そのままインゴールに飛び込み松島選手がチーム初トライを挙げました。

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松島選手の1本目のトライ。ダイブした瞬間、横からタックルを受け、しばらく動けない状態に。一瞬ヒヤリとしましたが、その後も元気にプレーを続けました。

 

2本目のトライは後半24分。こちらもフィジーのゴール前のラックからSH田中→SO田村と素早くパスをつなぎ、田村選手からの飛ばしパスが左に構えていたFLマルジーン・イラウア選手に渡ってトライ。相手ディフェンスが1人少ないこともありますが、前方が無人の状態になるようチームで崩したトライとなりました。

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イラウア選手のトライ。チームとして完全にフィジーを崩して取り切ったトライという印象でした。イラウア選手はこれが記念すべき代表初トライです。

 

そして日本代表にとって最後になった3本目のトライは、再び松島選手でした。後半38分、ゴール前で得たペナルティーからSH内田啓介選手がクイックリスタートを仕掛け、相手防御の薄い右方向へパス。SO田村選手から右外のFB松島選手にパスが渡り、インゴールへと飛び込みました。

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チーム3本目、そして松島選手2本目のトライ。バックスリーとしてトライを取り切るという役割を全うしました。

 

この3本は堀江選手が言うように、どれもチームとしていい形で取れたトライだったと言えるでしょう。しかしそれもフィジーが14人だったという条件下でのこと。現状でも完敗の内容でしたが、そうでなかった場合はより大差で敗れていた可能性もあった試合でした。試合後、ジョセフHCは記者会見で敗因や課題に言及しました。

 

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試合後の記者会見。ジョセフHC(左)も堀江ゲームキャプテンも悔しそうな表情を隠しませんでした。

 

──試合を振り返って。

 

ジョセフHC「先週末にウェールズとタフなゲームをして、その後しっかり準備してきましたが、今日の前半に選択の部分でいくつかのミスをしました。我々のアティテュード(姿勢)もよかったと思いますが、フィジーの方が前半はそれを上回っていました。後半はトライも取れましたし、アティテュードも改善されてよくなったと思います。負けはしましたけれども、非常にいいレッスンを受けました

 

──(海外メディア)今日の課題を具体的に。

 

ジョセフHC「前半は『フラット』過ぎたかなと思っています。『フラット』というのは、ポジションへの寄りを早くしたいにもかかわらずそれが遅かったということです。また、何かきっかけをつかみたかったのですが、選手が同じ方向を向いていない時間帯もありました。起き上がりが遅かったり、エネルギー不足なところもありました。(そこに対して)フィジーはフィジカルを使って我々にプレッシャーをかけてきた時間帯がありました。我々が強くないという意味ではなく、今日は上手くいかなかったということです。今後はチームとして一貫性を持ったプレーができるようにしていきたいと思います」

 

──(海外メディア)欧州遠征を振り返って。

 

ジョセフHC「4週間かけてここまで来ました。今回は約半数が代表として新しく選出された選手です。1戦目のアルゼンチン戦は準備期間が1週間しかありませんでしたが、(2戦目は)ジョージアに敵地で勝ち、(3戦目の)ウェールズとも接戦をしました。今回の収穫は、新しい選手の中から新しいタレント(能力)を持った選手を発掘できたことです。我々新しいコーチングチームにとってもたくさんのことを学ぶことができました。一つ残念なのは、次に代表として戦えるのは半年後になるということです」

 

──欧州遠征で学んだこと、ワールドカップ8強入りに向けて必要なことは。

 

ジョセフHC「まず、準備が非常に重要であるということ。そして、それぞれの選手が役割をしっかり果たすということです。ただ、4試合戦ってきて、国際レベルで十分戦っていけるという自信を持ちました。これからまだ次のワールドカップに向けては長い期間があります。毎週毎週試合があっても同じパフォーマンスができること、同じ強度を持てることが必要です。(ただ、)ウェールズに対しては非常にいいパフォーマンスをしたので、(このフィジー戦では)数名選手を交代させてチームをフレッシュな状態にした方がよかったのかもしれません」

 

──サンウルブズに期待することは。

 

ジョセフHC「コーチとして今秋のテストマッチ最後の試合に負けたことは非常に残念です。なぜなら次の試合がなく、勝っていい状態で終えることができないからです。サンウルブズについては、契約する選手と代表を兼ねる選手が大半になると思います。スーパーラグビーはテストマッチと全然違って半年間かけて行われるもので、試合数もたくさんあり、日本にとっては長距離の移動もあるので、すべての試合に出場できる選手ばかりではないでしょう。今回テストマッチが4試合ありましたが、ワールドカップにおいては5試合程度あるので(プール戦4試合+決勝トーナメント)、これから取り組んでいきたいと思います」

 

代表としての再集合が半年後になる分、来年2月に開幕するスーパーラグビーで現日本代表と近いメンバー構成になるサンウルブズが、その厳しいリーグの中で鍛え上げられることを期待しているジョセフHC。今回の日本代表が得た収穫の部分(例えば先ほど挙げたチームとして得たトライ、ウェールズ戦で見せたような組織ディフェンスなど)を伸ばし、様々な課題を克服していくことができれば、このフィジー戦の完敗は無駄にはなりません。ここから立て直すことは十分可能でしょう。

 

「国際レベルで十分戦っていける」。ジョセフHCの言葉に見えた光明を信じて、今後も日本代表の成長を見守っていきたいと思います。

 

<取材・文・写真/齋藤龍太郎(楕円銀河)>