再開するTOP14の注目選手は!? 平尾剛&大西将太郎が語るフランスラグビー

ルイ・ピカモール(No.8/モンペリエ)Getty Images

 

12月23日、フランスのラグビープロリーグTOP14が3週間ぶりに再開する。この日の第13節で全14チームの対戦が一巡。長いリーグ戦の折り返しとなる節で、どのチームもシーズン後半戦に向けて勢いづけたい大事な時期と言えるだろう。

 

12月第1週の第12節を終えた時点で首位に立っているのは、昨シーズンもリーグ戦を1位で通過したラ・ロシェル(勝ち点39)。2位はモンペリエ(同37)、3位はリヨン(同33)で、以下ラシン92(同33)、カストル・オランピック(同33)、トゥールーズ(同32)が追う形となっている。昨シーズン王者のクレルモン・オーヴェルニュは9位(同29)と開幕から調子が上がらず、準優勝の銀河系軍団・RCトゥーロンも7位(同31)となかなか浮上できずにいる。ただ、ご覧のとおり3位のリヨンから7位のRCトゥーロンまでの5チームは勝ち点差わずか2という混戦となっており、今後も順位争いから目が離せないところだ。

 

さて、去る11月はテストマッチ期間ということで、主にフランスリーグTOP14から選りすぐられたフランス代表は、ニュージーランド代表と2試合(うち1試合は非テストマッチ)、そして南アフリカおよび日本と各1試合を行ったが、結果は以下の通りとなった(※日付は現地時間)。

 

・11月11日(土) フランス ●18-38○ ニュージーランド

・11月14日(火) フランスXV ●23-28○ ニュージーランドXV ※非テストマッチ

・11月18日(土) フランス ●17-18○ 南アフリカ

・11月25日(土) フランス △23-23△ 日本

 

ギー・ノヴェスHC(ヘッドコーチ)率いるフランス代表は、接戦を繰り返しながらも最後まで勝ち切ることができず、これまで負けたことがない日本代表とは引き分けるなど不本意な成績で秋のテストマッチシリーズを終えた。

 

来年2月の欧州6カ国対抗戦「シックス・ネーションズ」、そして2019年のラグビーワールドカップ日本大会に向けて不安を残す結果となったが、こうしたフランス代表の戦いぶりを識者はどう見ていたのだろうか。そこから見えたフランスラグビーの特徴とはどのようなものであったのか。

 

まずはTOP14の解説でおなじみの元日本代表・平尾剛さんに、フランスのチームや選手について話をうかがった。なお、以下の平尾さんのコメントは引き分けに終わった日本代表戦を踏まえて話していただいた内容だ。

 

■両ロックのパワフルな働きにフランスの底力を見た──平尾剛さん

 

──日本代表戦を見て印象に残ったフランスの選手はいますか?

 

「両ロックですね。ロマン・タオフィフェヌア(RCトゥーロン)とセバスチャン・ヴァアマイナ(クレルモン・オーヴェルニュ)は接点での強さを見せていましたし、何度かジャッカルもしていました。ロックがあれだけ働くフランスのパワフルなラグビーは、かつて『シャンパン・ラグビー』と讃えられた次々に選手が湧き出しボールを繋げていくスタイルとは全く違うものでした。しかし、そこに今のフランスの底力を見ましたね。一方、バックスではテディー・トマ(WTB/ラシン92)のスピードが目立ちました。爆発的、瞬間的にスピードを上げるので、日本代表は2人、3人がかりでようやく止めていましたよね。やはりウイングに決定力があるのがフランスラグビーの特徴で、TOP14にもそんなクラスの選手がたくさん集まっています」

 

ロマン・タオフィフェヌア(ロック/RCトゥーロン)Getty Images

ロマン・タオフィフェヌア(ロック/RCトゥーロン)Getty Images

 

──スクラムハーフはバティスト・サラン(ボルドー・ベグル)とアントワーヌ・デュポン(トゥールーズ)という二人の若手がポジション争いをしています。パフォーマンスはいかがでしたか?

 

「サランはすごく目立っていたわけではなく、でも悪い点もなかった。ソツなくこなしていた印象です。フランスは基本的にスクラムハーフがアタックを指揮する重要なポジションですが、途中から出てきたデュポンの方が球さばきもよかったですし、伸びしろも感じました」

 

──フランスの戦い方で、可能性を感じた部分はありますか?

 

「やはりセットピースですね。特にスクラム。日本代表は早い球出しで上手くフランスのスクラムをいなしていましたが、もう少しプッシュをかけられていたら違った展開になっていたかもしれません。スクラムで優位に立つと勢いに乗るのがフランスですので、スクラムでプレッシャーをかけてからのアタックは良かったです。バスタローは途中出場でしたが、ああいった強い選手がもう少し働けばトマなどの速い選手がもっと走れるようになると思います」

 

──これからフランスはどういう戦い方を目指すべきでしょうか?

 

「フランスは伝統的にチームの出来にムラがありますからね。目指すべきはオフロードパスを使ったり、かつてシャンパン・・ラグビーと呼ばれたスタイルを目指すべきでしょう。TOP14を見ていてもそう思います。実はオフロードパスもハイリスクでアタックにムラが出やすいのですが、フランスの国民性やこれまでの伝統を見ているとやはりそれが合うのではないかと。それこそシックス・ネーションズで上位に食い込むためには、手堅くオーソドックスなプレーをするイングランドやスコットランドとは異なるスタイル、パスの数を増やしたり展開を早くする、あるいは細かなキックも織り交ぜて、ボールを動かすラグビーを目指した方が良いのではないかと思います」

 

■ピカモールのワークレートにあらためて感心──大西将太郎さん

 

続いて、同じく解説でおなじみの元日本代表・大西将太郎さんにも、再開するTOP14の注目選手なども含めて話をうかがった。こちらは南アフリカ戦までを踏まえて話していただいた内容だ。

 

──フランス代表の試合を見て印象に残った選手はいますか?

 

「やはりルイ・ピカモール(No.8/モンペリエ)のワークレート(仕事量)ですね。ボールキャリアというよりはディフェンスの部分でのワークレートが高かったです。あらためて良い選手だな、インターナショナルプレーヤーだなと思いました。また、ニュージーランドXV戦で2トライしたガブリエル・ラクロア(WTB/ラ・ロシェル)も素晴らしかった。TOP14で好調な選手はテストマッチでも好調でしたね」

 

──ピカモールは、モンペリエではボールキャリアとしての印象がそこまでありません。

 

「モンペリエにはボールを持って前に出る選手が多いので、ピカモールがそれをしなくても良く、むしろ他の仕事をしています。フランスが強い時にはこういう選手がバックローに一人いるんですよ。かつて活躍したティエリー・デュソトワールや、イマノル・アリノルドキなど、それに近いイメージで見ていました」

 

──前回のシックス・ネーションズではワークレートに驚かされたピカモールですが、最近はやや鳴りを潜めている印象はないですか?

 

「ジュディカエル・カンコリエ(FL/クレルモン・オーヴェルニュ)などもテストマッチになるとあまり良くないです。そう考えると僕はセクー・マカルー(FL/スタッド・フランセ)の方が良いと思います。彼はスピードがありますからね」

 

──ギー・ノヴェスHC体制となったフランス代表は、前回のシックス・ネーションズでボールキャリアが前に出てオフロードパスでチャンスを作るスタイルのラグビーを展開しました。しかし以降のテストマッチはそれができていないような気がします。

 

「どこかブレていますよね。もしそういうラグビーをしたいのであれば、僕ならマチュー・バスタロー(CTB/RCトゥーロン)よりもダミアン・ピノー(CTB/クレルモン・オーヴェルニュ)を起用するでしょう。ただ、まだセレクションの最中なのかな、とも思います。まずフランス代表としてどういうラグビーをしたいのかをはっきりさせて、その中でどういった選手を呼ぶのか、これから固まってくるのではないでしょうか。ただ、どの国も2019年に向けて強化のスピードが加速している中、フランスはそれが若干遅れている印象があります。どういったラグビーをしたいのかが、客観的に見ていてもよくわからないですね」

 

──そんなフランス代表ではありますが、戦い方で良かった点はありますか?

 

「やはり創造力豊かで、アンストラクチャー(攻守の整っていない状態)からのアタックの発想力は非常に素晴らしかったですね。僕も日本代表でフランス人コーチ(ジャン=ピエール・エリサルドHC)の指導を経験したのですが、ラグビーに関する考え方が日本とフランスでは全く違うと感じました。アタックの司令塔は世界的には10番(スタンドオフ)ですが、フランスでは9番(スクラムハーフ)です。9番と10番の選手はそれぞれ両方ともプレーできるというチーム作りをしています」

 

──現在のハーフ団の選手のサイズは決して大きくはありませんよね。

 

「日本人と体形的には変わらないという意味でも、日本人選手もTOP14で通用すると思っています。フランソワ・トゥラン=デュック(SO/RCトゥーロン)あたりに取って代われる選手は日本人でもいるでしょうから、9番か10番で日本人がどんどん挑戦してほしいと思いますね」

 

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平尾さんと大西さんの話を総合すると、フランスラグビーの特徴として、創造性豊かであること、フォワードにワークレートの高い選手が多いこと、司令塔がスクラムハーフであること、ウイングに決定力がある選手が揃っていることなどが挙がった。

 

これはフランス代表に限らず、フランスリーグTOP14にも共通している特徴と言えるだろう。そしてお二人が挙げた選手の活躍を軸にフランスリーグTOP14を見ていけば、フランスラグビーらしさやその魅力を味わうことができる、とも言えるわけだ。

 

そうした注目選手以外にも、負傷などで今後の戦列復帰を待っている代表級の選手も数多くいる。そして、まだ見ぬ新星がこれから生まれてくる可能性も十分ある。今後も各節、世界屈指の一流選手たちによる熾烈な戦い、そしてリーグ戦終盤のプレーオフ進出争いに注目だ!

 

◆◆ WOWOW番組情報 ◆◆◆

 

★「ラグビー フランスリーグ TOP14」

ラグビー世界最高峰のプロリーグ「TOP14」。上位チームの試合を中心に毎節2試合放送!

 

第13節:

モンペリエvsリヨン 12/23(土・祝)深夜2:20~ [WOWOWライブ]

ラシン92vsトゥールーズ  12/24(日)午前4:45~ [WOWOWライブ]

※12/23(土・祝)午前4:40~ WOWOWメンバーズオンデマンドで先行ライブ配信

 

第14節:

トゥールーズvsRCトゥーロン 12/31(日)午前4:30~ [WOWOWライブ] ※生中継

クレルモン・オーヴェルニュvsカストル・オランピック 

2018/1/1(月・祝)午前4:00~ [WOWOWライブ]

※12/31(日)夜11:55~ WOWOWメンバーズオンデマンドで先行ライブ配信

 

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■詳しくは、WOWOWラグビーオフィシャルサイトをチェック!

http://www.wowow.co.jp/sports/rugby/

 

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