日本ラグビー界で最も多くの国と対戦経験を積んでいる選手の一人が堀江翔太(パナソニック ワイルドナイツ)だ。
欧州6カ国対抗戦「シックス・ネーションズ」のうち、アイルランドとは2017年、スコットランドとは2013年、2015年、2016年、ウェールズとは2013年と2016年、フランスとは2011年と2017年、イタリアとは2011年と2014年。イングランドを除くすべての国と複数回の対戦を経験。シックス・ネーションズの6カ国以外でもニュージーランド、オーストラリア、南アフリカ、アルゼンチンの南半球4強をはじめ、フィジー、サモア、トンガ、ジョージアなど、ワールドカップを戦う世界ラグビーのほぼすべての国と対戦経験を積んでいる。
堀江翔太が見るシックス・ネーションズの各チームの特徴、大会の見どころ、そして注目選手は?
■シックス・ネーションズについて
伝統を感じる大会ですよね。何しろ130年も続いている大会ですから、すごいプレッシャーの中で戦っているんだろうなと感じます。ウェールズのカーディフなんて、7万人以上の観客が入るし、どこのスタジアムでも5万人くらいの観客は入って、どのカードもすごい盛り上がりの中で試合をする。お互いに、絶対に負けられないという雰囲気がありますよね。
ラグビー自体は、南半球と比べるとシンプルなイメージです。ラグビーの中のフィジカルの部分を重視していますよね。日本と対戦するときは特にそこを攻めてきます。スコットランドなんか、特にそうですよね。ペナルティからラインアウトモールにしてガンガン攻めてきますね。
■イングランドについて
エディーさんがHC(ヘッドコーチ)になってから、いろんなことが整理されたような印象があります。もともと、北半球では一番選手層が厚くて、一番伝統もあるけど、試合ではいまいちやることにまとまりがありませんでした。それが、エディーさんがHCになったことで、戦い方が整理されたように思います。相手から見たら、やることが複雑になった印象を受けるでしょうけど、当事者であるイングランドの選手にとってはむしろすっきりしていると思います。練習の様子の映像を見たら、あんまり怒ってない感じでしたね。僕らの時とはまた違った戦略、戦術を立てているんだろうなとは想像します。ワールドカップまであと2年。日本と違って、イングランドは一人一人の能力が高いし、今はベーシックなところをじっくりと高めて、どこかの段階で戦術、戦略を選手に授けるんじゃないかな。エディーさんのことだから、きっと、何かを隠し持っていると思いますね。
■アイルランドについて
シックス・ネーションズで一番注目しているチームです。6月に対戦したときは、僕たち日本選手の名前もクセも全部覚えてきて、準備がすごく徹底されていました。ディフェンスしていても全然ミスをしなかったですね。あれで、ブリティッシュ・アンド・アイリッシュ・ライオンズの選手で10人以上抜けていたわけですから、その選手たちが戻ってきたら、もっと良いチームになるでしょうね。やること自体はシンプルだけど、ボールを動かす技術は高いし、ゲームプラン、戦術、戦略の引き出しも多い。フッカーもいい選手ですよね。フィジカルだけじゃなく走れて、器用で、パスもできます。僕が目指すラグビープレーヤー像に近いし、負けたくないですね。
■スコットランドについて
強いです。僕らが負けたオーストラリアに、けっこうな大差(53-24)で勝っていますよね。戦い方はシンプルですよ。強いFWを前に出して、そこから外へ展開する。
印象的な選手は、大きいLO(ロック)の兄弟がいますよね。グレイ兄弟。お兄さんのリッチー・グレイは207センチでしたっけ。止めるの難しかったな。
個人的にはFB(フルバック)のショーン・マイトランドに注目しています。彼はもともとニュージーランド生まれで、僕が帝京大を卒業してカンタベリーのアカデミーに行っていたとき(2008年)にフラットメイトでした。当時からいい選手でしたね。それから10年以上経った2019年のワールドカップに日本で彼と対戦できたら、面白いですね。
■ウェールズについて
僕らにとっては、2013年に秩父宮で対戦して、初めて上位の国を相手に勝つことができたという意味でも思い出深い相手です。印象的なのは、2016年に遠征したときですね。プリンシパリティ・スタジアムですか、7万人以上のお客さんの中で試合をしたのは後にも先にもあれだけですが、お客さんも紳士的というか、ブーイングもなく、日本のいいプレーには拍手してくれて、応援してくれたという印象があります。もちろんシックス・ネーションズで積年のライバルと戦うときは全然違うと思いますが、ラグビーを愛していることはすごく伝わってきました。スタジアムも屋根付きで雨や風の影響を受けない、すごくやりやすいスタジアムだと思いました。チームもスタジアムもお客さんも、一番歴史を感じさせるのがウェールズだと思います。
■フランスについて
2011年のワールドカップ初戦で対戦したのが印象深いです。僕にとっては初めてのワールドカップでした。ずっと目指していた大会だったし、まず自分が試合に出られたことが嬉しかったです。
試合自体はシンプルに、フィジカルに攻めてくる印象です。やっぱり日本に対しては、どこのチームもその部分で攻めてきますね。この前(2017年11月)の遠征でも、これが「ザ・フランス」だ、というような戦い方で、ラインアウトからモールを押してきました。僕らもそれを予想していたから、僕らのディフェンスもうまいことはまった気がします。でもフランスはもともと引き出しが多いし、キックも上手な選手が多いです。次に戦うときがあったら、やり方を変えてくると思います。どう変えてくるか、楽しみですね。
個人的には、この前トイメンになったフッカー(HO)のギエム・ギラドに注目しています。キャプテンだったし、フランスリーグTOP14のRCトゥーロンでプレーしているんですよね。スキルがあってランも良くて、どちらもできます。僕の目指しているスタイルにも近いし、年齢も同じ31歳。ちょっと親近感を覚えます。
■イタリアについて
2011年ワールドカップ前のウォームアップゲームと、2014年の秩父宮の試合で対戦しました。シックス・ネーションズの中ではなかなか上位には入れないけれど、スクラムの強さはトップクラスだと思います。
■シックス・ネーションズの優勝、そして注目は――
うーん、アイルランドかイングランドか、どっちかじゃないでしょうかね。どちらもいいラグビーをするし、どちらもここで勝っておきたいだろうし。僕の予想はこの2つのどちらかです。
注目は、僕らにとってはやはり、2019年のワールドカップで実際に対戦するアイルランドとスコットランドがどんな戦いをみせるかですね。どうゲームを組み立ててくるのか。今年のテストマッチの成績を見ると、北半球勢はみんな調子が上がっている感じがしますよね。
南半球では、ボールを動かしてスペースを攻めてくるスタイルが主流だけど、北半球、特にヨーロッパはどんどんぶつかって、フィジカルなやりあいから優位性を作っていくのが主流ですから、一般の方がテレビで観戦しても分かりやすい、面白いラグビーだと思いますね。僕らよりも二回りくらい大きい選手たちが、思い切りぶつかり合うんですから、これを見るだけでも面白いです(笑)。その上にそれぞれの戦術があって、スキルがあって、スピードがあって、といいう要素を楽しめますからね。
もう一つ楽しめるのは、シックス・ネーションズを戦っている選手たちは多くが2019年のワールドカップで日本に来る選手だということですね。僕らは予選プールで対戦するアイルランドやスコットランドにどうしても目が行きますが、他のプールに入った国の選手たちも、日本のワールドカップを目指しています。2019年に向けて注目するチーム、気になる選手を見つけるのも、シックス・ネーションズの楽しみ方だと思います!
◆◆ WOWOW番組情報 ◆◆◆
★開幕直前!ラグビー欧州6カ国対抗戦「シックス・ネーションズ」観戦ガイド
エディー・ジョーンズの独占インタビューや堀江翔太選手、田村優選手による「シックス・ネーションズ」の見どころなどをわかりやすくお届け!
1/20(土)午前9:25~ [WOWOWプライム]ほか ※無料放送
★「ラグビー欧州6カ国対抗戦 シックス・ネーションズ」
ラグビー欧州最強を決める戦い、2018年大会も全15試合生中継!
2018/2/3(土)開幕!
第1節:
ウェールズvsスコットランド 2/3(土)夜11:00~ [WOWOWライブ]
フランスvsアイルランド 2/3(土)深夜1:30~ [WOWOWライブ]
イタリアvsイングランド 2/4(日)夜11:45~ [WOWOWライブ]
第2節:
アイルランドvsイタリア 2/10(土)夜11:00~ [WOWOWライブ]
イングランドvsウェールズ 2/10(土)深夜1:30~ [WOWOWライブ]
スコットランドvsフランス 2/11(日・祝)夜11:50~ [WOWOWプライム]
第3節:
フランスvsイタリア 2/24(土)午前4:45~ [WOWOWプライム]
アイルランドvsウェールズ 2/24(土)夜11:00~ [WOWOWライブ]
スコットランドvsイングランド 2/24(土)深夜1:30~ [WOWOWライブ]
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