オールブラックスにわずか7点差…日本代表、強豪ニュージーランドに31-38で敗れるも自信深める

4年ぶり7度目の対戦は、日本ラグビー史において過去最大規模かつ最高の雰囲気の中で行われた。

 

10月29日(土)、リポビタンDチャレンジカップ2022「日本代表vsニュージーランド代表」の大一番が秋晴れの東京・国立競技場で開催され、ラグビー日本代表戦ならびに新設後の国立競技場での最多観客動員記録となる65188人ものファンが熱戦を直に見守った。

 

日本代表はニュージーランド代表「オールブラックス」と過去6度対戦し、0勝6敗。2018年11月3日に東京・味の素スタジアムで行われた前回対戦は31-69で日本代表が敗れているが、過去最高得点(5トライ)、最少点差という結果を残した。

 

来年のラグビーワールドカップ2023フランス大会で、日本大会(8強)越えの4強以上を目指す日本代表にとって、今回のニュージーランド戦はその現在地、成長度を確認できる重要な試合となった。

 

両国国歌斉唱の後に行われた、オールブラックスのハカ「カ・マテ」

両国国歌斉唱の後に行われた、オールブラックスのハカ「カ・マテ」

 

SO山沢拓也のキックオフで幕を開けた前半、日本代表は序盤からディフェンスが光ったが、ニュージーランドは11分にHOサミソニ・タウケイアホがラインブレイクするとLOブロディー・レタリックにパスが渡り独走トライを許す。SOリッチー・モウンガのゴールも決まり、スコアは0-7に。

 

先制された日本代表は19分、SO山沢が落ち着いてPGを決めて3-7とチーム初得点を挙げる。22分、ニュージーランドCTBブレイドン・エノーがインゴールへ飛び込むも、日本代表WTB松島幸太朗がその下に滑り込むようなトライセービングタックルを決めて相手に得点を許さない。

 

堅い守りで粘り続けた日本代表だったが、26分にニュージーランドはCTBエノー、32分に俊足WTBセヴ・リースが立て続けにトライを決めて3-21と一気に点差を広げられる。それでも日本代表は集中力を切らせることなくプレーを続け、37分、相手の処理のミスから敵陣で転がったボールに反応したSO山沢が得意のキックでボールを転がし、自らキャッチしてトライ。ゴールも決めて10-21とする。

 

ドリブルのようにボールを転がしトライを決めた日本代表SO山沢拓也

ドリブルのようにボールを転がしトライを決めた日本代表SO山沢拓也

 

さらに前半終了間際の40分、日本代表はFB山中亮平、CTB中村亮土、そして左大外に構えていたCTBディラン・ライリーへとパスをつなぎ、ランで鋭く内に切り込むCTBライリーからのバックフリップパスを受けたSH流大がインゴールへ飛び込み、鮮やかなトライ。SO山沢のゴール成功で17-21とし、わずか4点差で試合を折り返す。

 

前半終了間際にトライを決めた日本代表SH流大

前半終了間際にトライを決めた日本代表SH流大

 

前半終盤に立て続けに2トライを決めた勢いを後半も活かしたい日本代表だったが、後半キックオフ早々の2分に日本代表のタックルを振り切って前進したニュージーランドWTBケイレブ・クラークがトライ。17-28と日本代表は再び引き離される。15分にも自陣ゴール前でピンチを迎え苦しい状況に追い込まれた日本代表だが、FL姫野和樹のジャッカルで危機を脱する。

 

タックル、ジャッカルなどで常に最前線で奮闘したFL姫野和樹

タックル、ジャッカルなどで常に最前線で奮闘したFL姫野和樹

 

すると直後の16分、ニュージーランドSHフィンレー・クリスティーのキックをチャージした日本代表LOワーナー・ディアンズがボールをそのまま懐に収め、インゴールまで独走。チーム3トライ目を決めて、途中出場のSO李承信のゴールも成功し、24-28と再び4点差に詰め寄る。

 

キックチャージからのトライで反撃の機運を高めた日本代表LOワーナー・ディアンズ

キックチャージからのトライで反撃の機運を高めた日本代表LOワーナー・ディアンズ

 

21分にはニュージーランドNO8ホスキンス・ソトゥトゥのトライで24-35と再び11点ビハインドとされた日本代表。26分にはニュージーランドLOブロディー・レタリックが危険なプレーで退場となり日本代表は数的有利となったが、なかなかスコアを重ねることができない。

 

チャンスが訪れたのは39分。敵陣ゴール前で粘り強く攻め続けた日本代表は、ラックからボールを持ち出したFL姫野がラックサイトを突いてトライ(TMOの結果トライが認められた)。31-35と再び4点差に詰め寄る。

 

だが、42分まで自陣でフェーズを重ねた日本代表はノットリリースザボールのペナルティで最後の攻撃の機会を失う。ニュージーランドSOモウンガがPGを決めて、最終スコアは31-38。惜しくも勝利に届かなかった日本代表だったが、対ニュージーランド戦過去最多タイ得点、過去最小失点、過去最少得点差という結果を残し、成長を証明した。

 

試合後、日本代表ジェイミー・ジョセフ ヘッドコーチは手応えを感じていた。

 

「選手たちは本当にいい戦い方をしてくれたと思っています。勝てるチャンスを作りました。もし勝ったとしたら日本の歴史に刻まれる試合になったでしょう。最初から自分たちがやりたいことをしっかりとでき、勝てるところまで来ました。勝つのに十分なチームになってきたと思います。最終的に届かなかった部分をしっかりと改善していく必要があります。ノックオンなどの細かいミス、ペナルティなどは修正していかなければなりません」

 

HO坂手淳史キャプテンもチームの成長を実感しつつ、課題を挙げた。

 

「国立(競技場)という場所で65188人のお客さんの前でラグビーできたことはすごくうれしいですし、素晴らしい経験になりました。今週1週間の準備を経て自信を持ってグラウンドに立ちました。勝てると思っていましたし、この1週間だけではなくその前の6週間含めて積み上げてきたものがありましたので、勝つという思いで戦いました。最後は届かず、ジェイミーの言うとおりたくさんのミス、ペナルティがありました。タックルミスなどそういう部分は多々あるのですが、この1週間やってきたということは間違っていなかったですし、自分たちの目指すラグビーを少しは見せられたかなと思います。これから修正して、最後に勝つところまで持っていけるようなラグビーをこれから作り上げていきたいですし、またがんばっていきたいと思います」

 

一方の、ニュージーランド代表イアン・フォスター ヘッドコーチは日本代表のプレーを評価した。

 

「日本代表にとっても我々にとってもいいゲームでした。意味のある試合だったと思いますし、日本代表は最初から最後まで素晴らしいプレーをしていました。我々はプレッシャーがかかった状況で落ち着いてプレーできました。理想的なパフォーマンスではありませんでしたが、この結果につなげられてよかったです」

 

また、サム・ケイン主将も日本代表のプレーを褒め称えた。

 

「日本代表は予想通り最後まで高いスキルでプレーしていました。我々は最後までハードワークする必要があり、80分間戦い切りました。日本はボールをつなぐ力が素晴らしかったです。(チーフスでかつてチームメイトだった)リーチ マイケル選手と試合後に話をして、ジャージーを交換しました」

 

日本代表FLリーチ マイケルとジャージーを交換したニュージーランドFLサム・ケイン

日本代表FLリーチ マイケルとジャージーを交換したニュージーランドFLサム・ケイン

 

歴史的勝利はならなかったが、オールブラックス戦史上最高の戦いを見せて自信を深めた日本代表。今後は欧州に遠征し、12日(土)にイングランドと、20日(日)にフランスといずれも敵地で対戦する。イングランドは来年のワールドカップで対戦する相手であり、フランスの会場トゥールーズは同大会中の会場・拠点となる場所だ。意義ある遠征2試合でどのような戦いを見せるのか、引き続き注目したい。

 

取材・文・撮影/齋藤龍太郎(楕円銀河)

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