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【あの日の一枚】セブンズ瀬川HCの前でトライ!一矢報いたレメキの実力

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(最後にトライを決めた日本代表WTBレメキ ロマノ ラヴァ選手[左]。男子セブンズ日本代表HCを務めた瀬川智広さん[アルゼンチン23番ラミロ・モヤーノ選手の左]の目の前で決める形となりました)

 

ジェイミー・ジョセフ・ジャパン(以下JJJ)、初陣を飾れずアルゼンチン代表に大敗。

 

いや、もっと圧倒的大差での敗北という予想も、戦前には確かにありました。短い準備期間のなかでノンキャッパーも多数招集し急造した日本代表と、8月から10月にかけてザ・ラグビー・チャンピオンシップで激戦を繰り広げチームとしてますます成熟してきたロス・プーマス(それも昨年のワールドカップで4位に導いたダニエル・ウルカデHCが引き続き指導し、プレーヤーもTOP14参戦選手以外はほぼベストメンバー!)との対戦でしたから、「日本20-54アルゼンチン」という結果は決して悪くはないでしょう。

 

もちろんテストマッチは常にマストウィンで臨まなければいけないわけで、大差ではあることに変わりはありません。ただ、整備がまだまだこれからのディフェンス以外の部分(とりわけアタック、セットピース)は善戦と言って差し支えない、検証に値する試合だったという見方を私はとりたいと考えています。

 

試合を簡単に振り返ると、日本代表は前半途中までアルゼンチンと互角に渡り合います。しかし31分以降、昨年のワールドカップの得点王アルゼンチンSOニコラス・サンチェスがPG、トライ、ゴール、PGを10分足らずの間に立て続けに決めて、日本は6−21と一気に引き離されてハーフタイムへ。後半2分にはアルゼンチンWTBサンティアゴ・コルデロ、8分にはWTBマティアス・モロニがトライを決めて6−35とさらに差が広がります。後半12分、日本はNO8アマナキ・レレィ・マフィのトライがTMOの末に認められ13−35としますが、アルゼンチンは22分、26分、35分にもトライを決めて(特に22分、26分の連続トライは痛かった…。少なくともどちらかは防ぎたいところでした)スコアは13−54。歴然とした実力差を見せつけられました。

 

この時点ですでに勝負はついていましたが、日本は最後までアタックの姿勢を貫きます。39分にペナルティーから素早くリスタートしたNO8マフィを起点にSH小川→SO田村→CTB立川(共同キャプテン)→ループして再び田村→CTBラファエレ→田村とパスがつながり、田村のラストパスを受けたWTBレメキ ロマノ ラヴァが約40メートルを走り切り(途中で相手WTBサンティアゴ・コルデロのディフェンスをハンドオフでかわす!)、15 人制日本代表として初トライを決めました。最終スコアは20−54。13-54で終わっていた場合とではまったく印象の違う敗北となりました。

 

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昨年のワールドカップで大活躍したアルゼンチンWTBコルデロ選手にハンドオフを見舞うレメキ選手。

 

試合後、日本代表のジェイミー・ジョセフ新HCは記者会見でこう語りました。

「選手たちの戦いを誇りに思います。前半20分、後半20分は我々がどういうふうに戦うかを見せられました。最後の20分、試合(の勝敗)は決まっていましたが、あきらめない姿勢を見せられたし、最後のWTBレメキのトライは我々の戦い方を見せられました。(初キャップの)選手たちは初めて感じる強度だったと思うし、情熱はあったがミスもあった。それが失点につながってしまいましたが、ポジディブなところも多かったです。今日の試合に出た課題はじっくりかけて修正していきます。初キャップの選手も桜のジャージーを着て日本代表でプレーするプライドは見せてくれたと思います」

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試合後に記者会見に応じるジェイミー・ジョセフHC。両サイドは共同キャプテンのHO堀江翔太選手(左)とCTB立川理道選手(右)。

 

本記事の冒頭、点差の割にポジティブな書き出しとなったのは、ジョセフHCのこの言葉に裏打ちされたものです。そして新生日本代表としての「収穫」の中心にいたのは初キャップのメンバー、とりわけWTB14番でフル出場し、最後にパワフルでスピーディーなトライを決めたレメキ ロマノ ラヴァ選手(ホンダヒート)でした。あのトライこそが「我々の戦い方」だとジョセフHCは言い切り、高く評価したわけです。

 

15人制では初キャップながら、リオ五輪では男子セブンズ日本代表として4トライを決めた世界的実力者レメキ選手。その後の囲み取材でこう語りました。

「15人制(代表)の初トライなので、人生最後まで残っているから、超うれしかったです。ラストワンプレーなので。もともとジェイミーさんからは『ボールをもらったらアグレッシブに勝負しにいけ』と(言われていました)。チャンスはちょっと少なかったけど、最後にとれたのはすごくいいことです。(ハンドオフについては)あれは気持ちよかったですね。自分の強みはハンドオフとステップなので。練習どおり完璧でした。でもウインガー(WTB)として日本のためにもっとトライをとらないと試合に勝てないですから」

喜ぶ一方で、勝つためにはトライを獲らなければならないという使命感。あのトライも決して簡単なプレーではありませんでしたが、やはりセブンズで世界に揉まれた経験が出たのは明らかでした。

2019年のワールドカップ(の日本代表)に選ばれたいから、今はセブンズは置いておきます。セブンズに挑戦してオリンピックのチャンスがきたわけだけど、その前にもともと15人制をやりたかったので。次のオリンピック(2020年)はもう31歳の年だから、元気だったらチャンスをつかみたいけど、今は15人制です。一番いいのはそのプラン(2019年のワールドカップ日本大会と2020年の東京五輪に両方の代表で出場すること)ですね。元気だったら、ケガがなければいけるかなと思います」

 

向こう3年は15人制への専念を宣言したレメキ選手。実は最後に決めたトライをバックスタンドの最前列(それもゴールライン付近!)で見ていたのは、男子セブンズ日本代表のHCを務めた瀬川智広さんでした。これは後で写真を確認したときに気付いたもので、囲み取材の際にレメキ選手や瀬川さんに確認することはできなかったのですが、レメキ選手が「師」の目の前でセブンズ仕込みのトライを決めたプレー、そして退任がささやかれている瀬川さん(きょう午後に去就が正式発表されます)が「教え子」の華麗なトライに目を細める様子は、また違った美しさがありました。

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左端が瀬川智広さん。リオ五輪4位に導いた名将が、祝福されるレメキ選手(その右)を笑顔で見守っていました。

 

ジェイミー・ジャパンが一矢報いたトライの裏に、セブンズ・ジャパンの功績あり。サンウルブズやトップリーグ、様々な代表カテゴリーが連動して、日本代表は強くなっていきます。強化への道はそれしかありません。その一端を垣間見た瞬間でした。

 

<取材・文・写真/齋藤龍太郎(楕円銀河)>