トップリーグ第11節、12月10日(土)花園ラグビー場で2試合が行われました。第1試合のHonda対パナソニック戦は、オーストラリア代表66キャップを誇る世界最高のFLのひとりであるデービッド・ポーコック選手(パナソニック)がトップリーグデビューということで戦前から注目されましたが(記事は後日更新します)、それ以上に出色の活躍を見せたのが同じくパナソニックのWTB福岡堅樹選手でした。
試合後、パナソニックのロビー・ディーンズ監督が頼れる若きWTBを手放しで褒め称えました。
「今日は福岡がいいパフォーマンスをしてくれました。トップリーグ公式戦初トライ、そして6トライを決めてくれて素晴らしかったです」
そう、福岡選手はこの日の前半19分にトップリーグ初トライ、そして1試合6トライはリーグ創立史上最多タイ記録をマークしたのです。もちろんこの試合のマン・オブ・ザ・マッチにも選出されました。ちなみに6トライの記録保持者は、かつてNECでプレーしていた世界的WTBネマニ・ナドロ選手(現モンペリエ。フィジー代表)で、2011年12月18日に対Honda戦に記録。福岡選手が日本代表として11月26日に対戦したばかりの相手でした。
6つのトライはそれぞれ様々なシチュエーションから生まれましたが、いずれも福岡選手の最大の武器であるスピードと、獲り切ることができる決定力が作用していたことは間違いありません。その中でも、福岡選手にとってベストトライはどれだったのでしょうか。試合後に話を聞きました。
──6トライを振り返って、いかがでしたか。
「チームがいい形でボールをつないでくれたのがトライの要因になったと思います。1本目がトップリーグで初めてのトライだったので、そういう意味ではこれまで獲れなかったぶん獲り切れたという思いがありますね」
──1試合6トライはトップリーグタイ記録です。
「もう1本獲れそうだったので、あとひとつ欲しかったですね(笑)。でも光栄な記録をチームのみんなに作ってもらいました。記録のことは終わってから言われて初めて知りました」
──ネマニ・ナドロ選手の記録と並びました。
「彼と同じぐらい獲れたというのは自信になります」
──6トライは初めてのことですか?
「いえ、大学でも(関東大学)対抗戦のデビュー戦が6トライだった記憶があります(筑波大学1年時の2012年11月24日、日本体育大学戦で6トライ)」
──初トライについては。
「やっぱりうれしかったですね。それも筑波大学時代から組んでいる山沢(SO山沢拓也)と大学時代からやってきたプレーで獲れましたので」
──精神的な準備も十分でしたか。
「チームメイトから『ジャパンではトライが獲れるのにチーム(パナソニック)ではなんで獲れないんだ』といじられていたので(笑)、今回こそ絶対に獲らなきゃなと思っていました。そういう意味でもよかったです」
──ベストトライは。
「気持ちよかったのは(後半10分の)ヨシ(FB藤田慶和)とのプレーですね。ヨシとも(日本代表で)ずっと一緒にやってきたので、いい形で狙ったプレーができました。自分個人としては、TMOになったシーン(後半7分と18分のトライ)もWTBらしい仕事ができたかなと思います」
──1年目の選手が数多く出場しました。
「意識することはなかったですが、コミュニケーションが取りやすいというのはあります。これからを担っていくメンバーですし、世代交代がどこかであると思うので、自分たち(若手選手たち)でしっかり組み立てられることが確認できたと思います」
──スピードが上がっている印象があります。
「今週ふくらはぎの張りがあって大丈夫かなと思っていたんですけど、逆にしっかりコントロールできていたのが本番のスピードに活きたのかなと。運動量もセブンズを経験したことで上がったと思います。セブンズらしいボールの活かし方も役立っていますね」
──残り試合をどう戦いますか。
「1敗もできないということと、優勝もまだ目指せると思うので、あきらめずに自分たちらしいパフォーマンスをして、そのあと日本選手権もありますので、そこでリベンジできるようにこれからもチームを高めていきたいです。自分もWTBとして存在をアピールしていきたいですね。アタックだけでなくディフェンスも自分の強みだと思っていますので、そこも含めて」
というわけで、福岡選手にとってのベストトライは藤田選手との阿吽の呼吸から生まれた3本目のトライでした。観戦していたみなさんのベストトライはどれでしたか?
<取材・文・写真/齋藤龍太郎(楕円銀河)>