2年前の決勝と同カードとなった今年の花園準決勝第1試合は、見事と言うほかない素晴らしい試合でした。
東福岡(福岡)25−24御所実(奈良)。わずか1点差。どちらかが敗者になってしまうのも惜しいほどの紙一重の差でした。しかし敗れた御所実(奈良)の竹田寛行監督は、試合後に「遠い遠い1点」という表現を用いました。そこにはどのような意味が込められているのでしょうか。
「(サイズが)小さいなりに最後まで一生懸命やり続けてくれました。みんなでやろうとしていたことを、最後まで。相手のやろうとしていたことをさせまいと、最後までやり続けることが次につながると証明してくれたので、彼らは上(大学など)に行っても、必ず(下級生が)つなげてくれると思います。今日の負けは2年前の負け(2014年度花園決勝。東福岡57−5御所実)とは意味が違います。今日は1点差で負けましたけど、将来につなげる1点になると期待しています」(御所実・竹田寛行監督)
ここまでは、その「1点」に将来的な可能性を見出せている、そんなコメントでした。しかし締めくくりに、
「(この結果は)最後までやろうとした結果に他なりません。ただ、遠い遠い1点です。またここへ帰ってきて、下級生がつなげてくれると思います。またがんばります。ありがとうございました」
それ以上多くを語ってもらうことはできませんでしたが、2度も11点差をつけながらも最後は逆転され勝ち切れなかった結果に対しての評価が「遠い」という表現につながっているのでしょう。そして「下級生がつなげてくれる」「またがんばる」という言葉からは、また一からチームを作り始めて日本一を目指すということについて「遠い」と表現されたようにも感じます。しかしそれは遥か彼方の届かない目標ではなく、「将来につなげる1点」と竹田監督も言うように希望を持って臨む目標であることは言うまでもありません。
さて、その「1点差」に大きく影響したのは、東福岡全員での終盤のアタックと、後半20分のトライ後のコンバージョンゴールです。右スミからの難しい角度、しかも生駒山から吹き降ろされる強い寒風のなか、1年生 SO/CTBの吉村紘選手は堂々と構え、蹴り上げました。この2点で20−24とビハインドを4点とし、24分の逆転トライへの布石となったわけです。
吉村紘選手のコメントです。
「緊張しましたけど、練習通りに蹴ることができました。風上だったので(風も計算に入れて)少し風に押してもらうように蹴りました。練習後にフリーの時間があって、そこでポイントポイントに分けて1ポイントにつき3回ぐらい集中して蹴っています。大会前はそうしていました。(ルーティンは? の問いに)五郎丸ポーズみたいなものはないですけど(笑)、助走の間(ま)だったり、呼吸の数だったり、そういうことは決めています」
1年生とは思えない落ち着いたプレーでしたが、コメントも落ち着いていました。決勝でもおそらく出番があることでしょう。
さて、御所実から見た東福岡はどんなチームだったのでしょうか。前半に2トライを決めたWTB南昂伸選手は「ヒガシ」と対戦してこう感じたそうです。
「体の大きい選手が多いです。御所実は体の小さい選手が多いので、リロードとタックルでもっとリアクションしながらヒガシに対して枚数を増やす練習をしてきたのですが、(そこで)ヒガシに勝てませんでした」
サイズの差に加えて、リロードを速くしても対応されてしまう強さを感じたそうです。しかし御所実のサイズをカバーする組織力、モールの強さは目を見張るものがありました。東福岡に勝っていた面、勝てなかった面、それぞれが出た試合だったということになるのでしょう。
第2試合の模様は明日お伝えします。
<取材・文・撮影/齋藤龍太郎(楕円銀河)>